いろいろ聞きたい
キク本さん

頼りになる
ヨリ田さん

©とどろき ちづこ

キク本さんのお子さんは最近、治療の難しい
病気にかかっていることがわかりました。
病院から、「小児慢性特定疾病
(しょうにまんせいとくていしっぺい)」の
医療費助成制度の利用を勧められたのですが、
どういうものかよくわかりません。そこで、
すでにこの制度を利用しているヨリ田さんから、
いろいろ教えてもらうことにしました。

ヨリ田さん、これって、一体、どういう制度なの?

慢性疾患を持つ子どもがいる家庭を支えるための制度だよ。

慢性疾患? 
うちの子みたいな…

そうだね、症状が長く続いたり、
治療に時間がかかったりする病気のことだね。
こうした家庭では病院代や薬代が高額になりがちだけど、この制度はその負担を軽くしてくれるんだ。

小児慢性特定疾病の医療費助成制度

小児の慢性疾病のうち、国が定めた疾患を持つお子さんの医療費(の自己負担分)の一部を補助(公費負担)する制度。
利用者は家庭の収入の状況に応じ減額された医療費(の自己負担分)を医療機関の窓口で納めます。

なるほど、
これはよさそうだね。
うちもその制度が利用できるのかな?

気になるよね。次のような場合に対象となるよ。

18歳未満で、小児慢性特定疾病の方

ただし、18歳になる前からすでに制度を利用している方は、20歳未満まで延長が可能です。

うちの子は5歳。
病気は小児慢性特定疾病の1つだって聞いたよ。
ってことは、当てはまるね。

そういうわけでもないんだ。
小児慢性特定疾病であっても、制度の対象になるかどうかは病気ごとに異なるよ。
状態や治療状況など定められた基準を満たしている場合に対象となるんだ。
詳しくはここで確認するといいよ。
主治医に相談してみるのもgood!

了解。
ところで、実際に利用することになったら、まず何をすればいいのかな。

利用するには、病院の窓口で「医療受給者証」の提示が必要だよ。まずはそれを、住んでいるところの自治体窓口に申請することから始めよう。
申請手続きの流れは以下のとおり。

自治体窓口または主治医に申請について相談する

お住まいの自治体の担当窓口や主治医の先生に、小児慢性特定疾病の申請について相談して下さい。必要となる書類や手続きの方法を教えてくれます。
また、申請の際に必要となる専用の医師診断書(医療意見書)を医師に書いてもらいましょう。なお、医療意見書を記載する医師は、小児慢性特定疾病指定医の資格を持っている必要があります。

必要書類を自治体窓口へ提出する

お住まいの自治体の担当窓口に必要書類(申請書、住民税課税証明書、医師記入済みの医療意見書、健康保健証の写し、など)を提出します。

「医療受給者証」の交付を受ける

申請を通過すると、「小児慢性特定疾病医療受給者証」等が交付されます。

ところで、お金の負担が軽くなるってことだけど…
お金がもらえるんだっけ?

えっとね、お金がもらえるのではなくて、支払うお金が少なくなるんだよ。具体的には…

窓口での自己負担額が3割負担から2割負担となります。
さらに1か月の自己負担上限額が設けられますので、上限額に達した場合、支払いは無くなります。

つまり、窓口で支払う金額が小さくなるんだ。
それだけじゃなく、月々の医療費がある一定の金額に達したら、それ以上は支払わずに済むってわけ。

対象となるのは、小児慢性特定疾病に関連してかかる医療費のうち、指定医療機関での保険診療の適用分と入院時の食費のみです。

交通費、消耗品、文書料、個室料金など、保険診療外の費用は対象にならないよ。指定医療機関については、お住まいの自治体に問い合わせてね!

※地域によって独自の助成がある場合もあります。

【自己負担上限額】
(単位:円)
階層区分
階層区分の基準
1か月の自己負担額
医療費(外来・入院)+薬剤費+訪問看護費
一般 重症
人工呼吸器
等装着者
生活保護等 0
市区町村民税
非課税
(世帯)
低所得Ⅰ
(年収80万円以下)
1,250 500
低所得Ⅱ
(年収80万円超)
2,500
一般所得Ⅰ
(市区町村民税7.1万円未満)
5,000 2,500
一般所得Ⅱ
(市区町村民税7.1万円以上25.1万円未満)
10,000 5,000
上位所得
(市区町村民税25.1万円以上)
15,000 10,000
入院費の食費 1/2 自己負担

自己負担上限額は世帯の所得で決まりますが、この「世帯」とは住民票上の世帯とは一致しません。医療保険上では同じ医療保険に入っている人同士が世帯となります。例えば、患者(子ども)の両親が共働きで別々の会社に勤務し、それぞれに被用者保険に加入している場合、子どもは父か母のいずれかの被用者保険に加入しますが、もしそれが母の保険であれば、この母子が「世帯」となり、母の所得区分が適用されます。

ただし、両親ともに国民健康保険(国保)に加入している場合は、また異なるよ。たとえ父母に別々に収入があったとしても、国保は住民票上の世帯主(多くの場合は父)に対して合算して請求が来るから、この場合は父母の合算した所得に対する区分となるんだ。

うーん、お金の計算、
何だかややこしそうだなあ…

大丈夫! 
具体的に考えてみよう。
例えば、キク本さんのお宅は、ええと、世帯の階層区分は「Ⅴ. 一般所得Ⅱ」だから…
1か月の自己負担上限額は10,000円だね(※)。

(※)重症患者認定を受けていない場合

 キク本さん宅のウサミちゃんは、○○病院(※)を受診しました。病院代は40,000円でした。自己負担は2割なので、窓口で8,000円支払いました。その後、△△薬局(※)に寄って薬を購入したところ、薬代は30,000円でした。自己負担分(2割)は6,000円ですが、1か月の自己負担上限額は10,000円で、すでにこの月は8,000円負担しているので、上限との差額の2,000円のみ支払いました。
 この月は、これ以上の医療費はかかりません。

(※)病院や薬局はすべて指定医療機関

わあ、だいぶ負担が軽くなるね。2割だけというのもありがたいし、さらに上限があるのは安心だなあ。

自己負担イメージ

小児慢性特定疾病の認定者が、さらに重症患者認定を受けた場合(以下のいずれかに該当)は、自己負担額の上限が変わります。

高額の医療費が長期的に継続する方
(医療費総額(10割)が50,000円/月を超える月が年間6回以上ある場合)
現行の重症患者基準に適合する方
この場合、「自己負担上限額」の表の「重症」欄の金額が適用されます。

※小児慢性特定疾病の認定とは別に、重症患者認定の申請が必要です。

おかげでだいぶわかってきたよ。
でも、実際に病院の窓口では何をするの? 
あと、医療費がこれまでにいくらかかったとか、覚えておけるかなあ。

医療受給者証などを忘れずに持っていけば、
心配ご無用!

申請した疾病に関する診察や治療などの際は、

小児慢性特定疾病医療受給者証
自己負担上限額管理票

を窓口で提示します。

窓口で自己負担上限額管理票に金額などを記入して
もらえるので、いつでも医療費の確認ができるんだ。
さっきの例だと次のようになるかな。
ほら、「自己負担の累積額」の欄を見れば、
今月はあといくらで上限額に達するか、
すぐに計算できるでしょ。

あと、もう1つおまけの情報。
医療費の助成のほかにも、
日常生活に必要な用具の給付を
受けられたりするよ。
これも要チェックだね!

お住まいの自治体によっては、当制度の対象となっているお子さんは、必要な日常生活用具を購入する際に給付を受けられる場合があります。世帯の所得に応じて自己負担があります。
対象となる種目と対象者の詳細はこちら
給付には申請が必要なので、事前にお住まいの自治体までお問い合わせください。

なるほど、いろいろなサポートがあるんだなあ。
この小児慢性特定疾病制度を利用すると、治療や療養を続けながらの生活の不安がずいぶん和らぎそうだよ。さっそく手続きしてみるね!

うん、それがいいね。まずは自治体の窓口と
相談してみようね。ずっと応援してるよ!

小児慢性特定疾病をはじめとする行政の支援施策の多くは、
「申請主義」です。
申請が認められた場合に発行される受給者証の開始日は、
「申請日」となります。
まず、自治体の担当窓口に申請したい意思を伝え、
必要となる書類や手続きの方法について、相談しましょう。

キク本さんは最近、お子さんのために「小児慢性特定疾病医療費助成」を利用し始めました。すでにこの制度を使っているヨリ田さんは、とても頼りになる存在です

……ってことがあってね。もっといろいろ知りたくて

たしかに、小さなお子さんがいる家庭では
「乳幼児・子ども医療費助成受給証
をすでに持っている場合も多いよね。
小児慢性特定疾病医療費助成と乳幼児・子ども医療費助成との違いは何だろう? 

知らない人も多いんじゃないかな?
この2つの助成について、よくあるギモンを挙げてみたよ。ぜひ教えて!

まかせて!

※「乳幼児医療費助成」は、自治体によって「子ども医療費助成」や「小児医療費助成」などと呼び方が異なります。また「受給証」も「医療証」「受給者証」などと呼ばれる場合があります。

1

小児慢性特定疾病医療費助成と乳幼児・子ども医療費助成って、
何が違うの?

どちらも子どもがいる家庭の医療費負担を軽くするためのものだけど、その財源や内容に大きな違いがあるよ。

小児慢性特定疾病医療費助成

国が行う国の税金を財源とした制度。

国が定めた基準により実施されるため、制度の内容は、全国どこでも同じ。

*助成の主な内容(全国共通)

窓口での自己負担が3割負担から2割負担に。
1カ月の自己負担上限額を超えての支払いナシ。
乳幼児・子ども医療費助成

都道府県や市区町村といった地方自治体の税金を財源とする独自の福祉制度。

助成対象となる年齢や所得制限の有無、自己負担金額、立て替え払いの有無など、自治体によって制度の内容は大きく異なる。

ほかにもいろいろ違いがあるみたいだね。さらに詳しい内容は下記のとおり。

小児慢性特定疾病医療費助成と乳幼児・子ども医療費助成との主な違い
  小児慢性特定疾病医療費助成 乳幼児・子ども医療費助成
  国の制度 自治体独自の制度
初回申請 自分で行う 自分で行う
(出生届や転入届と一緒に申請することが多い)
有効期間 原則1年 通常1年
更新申請 自治体から通知がきて、
窓口等で更新
自治体から通知がきて、
郵送等により更新
医師の診断書
必要
(医療意見書と呼ばれる専用の診断書を提出)
不要
対象の要件
年齢 全国共通で初回申請は18歳未満まで、継続申請は20歳未満まで 全国的に乳幼児までは対象となることが多いが、就学以降は自治体によって大きく異なる
対象疾病 国により対象として定められた疾病(小児慢性特定疾病)に限る 疾患名による制限はない
助成金額
(自己負担上限額)
窓口における医療費の自己負担額を2割に減額。世帯所得に応じて1か月の自己負担上限額が定められいる(最大15,000円/月) 主として窓口における医療費の自己負担額に対する助成。自己負担額がない(全額自治体が負担)場合から、一定額の支払いが必要となる場合までさまざま
2

「乳幼児・子ども医療費助成受給証」はもう持っています。
これがあれば、「小児慢性特定疾病医療受給者証」は
申請しなくても大丈夫?

この2つの助成制度は併用によるメリットもあるので申請を考えてみよう。

CHECK

小児慢性特定疾病医療費助成のメリット

乳幼児医療費助成の対象範囲は、保険診療の自己負担分と薬剤費などですが、小児慢性特定疾病医療費助成の場合、入院中の食事療養費の1/2助成も受けられます。
所得制限により乳幼児医療費助成が利用できない場合でも、小児慢性特定疾病医療費助成は利用可能です(所得により自己負担上限額が違います)。
小児慢性特定疾病対策による日常生活用具給付制度を利用して、必要な物品等への助成を受けられる場合があります。ほかにも、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業による相談支援など、医療費の助成以外の支援を受けることができます。
自治体によって実施状況が異なりますので、お住まいの『自治体窓口』にご確認ください。
また自立支援事業については、小児慢性特定疾病の受給者証の有無にかかわらず、相談・支援を受けることができます。詳細については『自治体窓口』にご確認ください。

あと、新規申請が18歳未満までというのも大きいね。
両方の受給者証があると、助成でカバーされる範囲が広がる可能性があるってわけだね。

3

この2つの助成を併用する場合、医療費の支払いはどうなるの?

医療費助成などの公費負担のものは、原則として国制度の利用が優先されます。つまり、保険診療の自己負担分から、先に小児慢性特定疾病医療費助成が負担する分が差し引かれ、次に乳幼児・子ども医療費助成が負担する分が差し引かれるよ。最後に残った金額を窓口で支払います。

※未就学児は2割、就学児以降は3割

窓口の人、そんなこと言ってた。具体的に教えて!

OK。
病院代の総額が12,000円だった場合を例に考えてみよう。

4

乳幼児・子ども医療費助成だけで無料になったり、
ごく少額の支払いで済む場合も多いので、
この助成だけで十分なのかなって思うんだけど…

これ、わかる。

だけどね、乳幼児・子ども医療費助成に自己負担金額が定められている自治体では、小児慢性特定疾病医療費助成を併用した方が、実際に窓口で支払う金額が少なくて済む場合があるよ。また具体的な例で考えてみよう。

P県では乳幼児・子ども医療費助成を使った場合、
通院1回につき最大500円の自己負担のみを支払うことになっています。
では、1回の病院代総額が30,000円となる通院が
月に3回あった場合の支払い金額はどうなるでしょう?

(注)この例では、保険診療の自己負担が3割、小児慢性特定疾病医療費助成による1カ月の自己負担上限額が10,000円とします。

乳幼児・子ども医療費助成=
小児慢性特定疾病医療費助成=
乳幼児・子ども医療費助成
のみ利用した場合

通院1回目

(病院代総額30,000円)

保険診療の自己負担は9,000円(3割負担)

適用→
自己負担分500円
窓口での支払い 500円

通院2回目通院3回目 も同じ

3回分の窓口での支払い金額合計
500円+500円+500円=1,500円

※以降も通院のたびに最大500円が加算される

乳幼児・子ども医療費助成と
小児慢性特定疾病医療費助成を併用した場合

通院1回目

(病院代総額30,000円)

 
適用→
保険診療の自己負担分6,000円(2割負担)
 
適用→
自己負担分500円
窓口での支払い 500円

通院2回目

(病院代総額30,000円)

 
適用→
保険診療の自己負担分6,000円。
ただし、この月は通院1回目ですでに6,000円を支払っているため、自己負担上限額10,000円との差額の4,000円のみ負担
 
適用→
自己負担分500円
窓口での支払い 500円

通院3回目

(病院代総額30,000円)

 
適用→
保険診療の自己負担分6,000円。
ただし、この月はすでに自己負担上限額に達しているため、負担金額は0円
 
自己負担分0円なので、
は不要
窓口での支払い0円

3回分の窓口での支払い金額合計
500円+500円+0円=1,000円

※以降も同月であれば、これ以上の支払いはない

(注)上記の例では、細やかな説明や注意事項等の記載は省いています。実際には、各助成を利用するのに必要なさまざまな条件や指定事項があります。申請時には各種文書料も必要です。利用の際には必ず内容をご確認ください。

つまり、1カ月の自己負担上限額が設定されている小児慢性特定疾病医療費助成では、どんなに病院に通っても上限額を超えての支払いは発生しない。一方、通院1回につきいくらかの自己負担があるとする乳幼児医療費助成を実施する自治体では、通院の回数等によっては、上限額を上回る金額を支払うことになる場合があるってことだね。ほかにもいろんなケースがあるよ。

本当だ。違いがあるね。
経済的な負担も軽くなるかもしれないので、小児慢性特定疾病医療費助成の申請や利用の仕方については、まずはお近くの窓口に相談!
 だね。

あともう1つ。小児慢性特定疾病医療費助成を利用する人が多ければ多いほど、病気に関する情報がたくさん集まるので、疾病研究の推進のための大きな力となるんだ。
このことは、助成制度の維持のためにもとても大切なんだよ。

制度を利用することが社会貢献につながるんだね。
病気の子どもたちのために、みんなで協力していけるとうれしいな。